Cinema Clip

ネタバレだらけの映画感想。和洋問わず古い作品が多め。

『火垂るの墓』

火垂(ほた)るの墓 [DVD]

1988年
監督: 高畑勲
声の出演:辰巳務、白石綾乃、他

サクマドロップスの缶に水入れてシャカシャカして飲むの、みんなでやったなあ。
ということでこれ、このくらいの時期になると何故か毎年観てます。

 

ぐるぐる巻のお母ちゃんがトラウマに

神戸空襲の際、お母ちゃんとは別々に逃げた清太さんと妹の節子。
この節子の声をやった白石綾乃さんは当時4歳です。私は大人がやってるのかと思ってたよ。4歳で声だけであの演技ができるって…いや、4歳でキャラクターと歳が近かったからこそできたのかもしれんけど。

ふたりは助かったものの、ひとりで逃げた母は爆撃に遭い、包帯ぐるぐる巻きの姿に。
清太さんは心臓が悪い母の身を案じるが、母はそのまま亡くなってしまう。

このお母ちゃんの包帯ぐるぐる巻きの姿がリアル過ぎてウジ虫もバッチリ描写されてるしで子ども心にトラウマになってしまい、実はこの映画、最後まで観たのは高校生くらいの時が初めてだったと思う。
子どものうちも散々観てるはずなんですが、辛すぎて途中でギブアップしていたのでしょう。

清太さんは母の死を節子には告げず、西宮のおばさんの家へ身を寄せることになります。

大人になってからわかった、清太さんの愚かさ

西宮のおばさんは、最初は清太さんと節子を暖かく迎え入れてくれます。
しかし日が経つにつれ、おばさんの態度は冷たくなる。娘と下宿人のご飯と、清太さん節子さんのご飯に差をつけ、小言を言う。
子どもの頃は、このおばさんの態度に腹が立ち、清太さんたちが可哀想で可哀想でしょうがなかった。

しかし大人になってからは、真逆の印象を受けるようになりました。

おばさんは、あのご時世ですから娘と下宿人の食事の工面だけでも必死です。鍋にこびりついた米を削って食べている描写も出てくる。この描写は松嶋菜々子のドラマ版にも出てきてましたね。 そんなところへ、育ち盛りの14歳と4歳の子どもが入ってきたのです。当然困る。
それでも最初は嫌な顔せず接してくれていたのに、対する清太さんの方はなんでか知らんがいつもそっけない態度。

家の手伝いをしている様子もなく、隣組の防火活動にも参加しない。勤労動員にも行かない。
言ってしまえばタダ飯食いです。
そりゃおばさんが嫌になって当然です。
勤労動員で毎日頑張ってる娘と下宿人を思えば、タダ飯食いのふたりが疎ましくなるのは自然の流れかと。

おばさんは清太さんに「お母さんの着物を売ってお米にしたい」と提案する。

お母ちゃんの着物の思い出。春なのか?桜が舞っている。
その桜吹雪が、流れるお米の粒に変わる。なんてことない場面ですが、回想からの切り替え方が素敵。



お母ちゃんのおべべは節子にとっても大切なもの。 泣いて抵抗しますがお米になって帰ってくると態度が一変。笑
やっぱり白いご飯が好きだもんね!

ところがそのお米もあっという間に尽きてしまい、再び汁だけみたいな雑炊に戻ってしまう。
そして節子の悪気のない一言で、ついにおばさんたちとは別々で食事をすることになってしまいます。

節子「うちのお米なのに…」

これでふたりは食事中の肩身の狭さから解放されるが、節子はお母ちゃんがいない寂しさからか夜泣きが酷くなる。こんなこともあり叔母さんとの関係は更に悪化。
叔母さんの「横穴に住んどったらええのに」の一言を機に、ふたりは叔母さんの家を出て本当に横穴で暮らすことを決意する。

ちなみに叔母さんの娘さんですけど、最初は優しくて節子に下駄を買ってあげたりしてくれていましたが次第にふたりとは距離が離れていきます。
ほとんど汁だけの雑炊を食べる二人を見て、気まずそうにしている場面もある。
娘さんは娘さんで板挟みだったのかもしれません。母の気持ちもわかるし、ね。

横穴で暮らし始めたふたり。
最初のうちは新しい住まいに喜んだり、ホタルを捕まえて喜んだりと楽しそう。

「ホタルはきれいだ」
それを私に最初に教えてくれたのって、もしかするとこの映画かもしれません。
子どもの頃東京に住んでいた私は、ホタルなんてまともに見たことがなかったのです。



翌日、死んだホタルたちを土に埋める節子。
「お母ちゃんもお墓に入ってる」と。
節子は叔母さんから聞いて知っていたのだ。お母ちゃんが死んだことを。
だけど、それを兄ちゃんには言わなかったのだ。兄ちゃんのために、我慢していたのだ。

4歳ですよ、節子は。えらいよ。

「海軍の息子」というプライドと、共生拒否による失敗

楽しい日々は長くは続かない。
持ってきた食べ物は底を尽きる。売るものも無くなった。働かないので当然収入もない。 親切なおじさんに叔母さんの元へ戻るように諭されるが、清太さんは拒否する。

節子は栄養失調からか身体に湿疹のようなものができ、お腹もゆるくなる。節子のために他所の畑から野菜を盗むようになるが、ついに見つかりボコボコにされるもの、懲りずに盗みを続けてついには空襲時に火事場泥棒まではたらくようになる。

ここです。子どもの頃と、この映画の見方が変わったのは。

子どもの頃は、こんな清太さんを可哀想だと思っていました。
こんなに妹のために一生懸命になって…と。

しかし大人になって、変わりました。
見ていてイライラするのです。
妹のためと言いながら、ひとりではまともなこともできないのに周りに助けを求めることもしない。

家も母親も亡くした自分たちを引き取ってくれた叔母さんと上手くやっていく努力をするべきだった。
横穴で食べるものがなくなった時点でおばさんのところへ戻るべきだったのだ。あそこで、叔母さんに頭を下げないといけなかったのだ。どうしてそれをしなかった?

海軍大佐の息子だというプライドが人に頭を下げることを邪魔してるのか?
それじゃあ泥棒することによってそのプライドは傷つかないのかい?

わがままなんですよ。お坊ちゃまだもの。
おうち、お金持ちだもの。節子がお造りと天ぷら食いたいって言ってるけど、どちらも昔は高級物だった。
おそらく普通の家庭ではそう食べれるもんではなかったでしょう。

清太さんが盗みに出かけていた時、節子はいつもひとりぼっち。
節子を死なせたのは戦争ではなく清太さんなんじゃないかと、大人になって初めてそう思った。

この後はご存知のとおり、日本が戦争に負けたことを知り、父ちゃんが乗ってた連合艦隊が全滅した事(つまり、父の死)を知り、そしてもう書いちゃったけど節子は死ぬ。
最後はよくネタにされてるけどおはじきをドロップと間違えて舐めてたりと、朦朧とするほどの衰弱っぷりだった。 それだけ衰弱していても、作った泥団子を兄ちゃんにあげようとする節子。涙腺崩壊。

清太さんは現代の私たちを映した鏡

「火垂るの墓」は物語の背景上、戦争の悲惨さを伝えることがテーマだと思ってました。
だけど違うかもしれない。

わがままばっか言って周りと上手くやれないと自滅するよと、この映画から言われてるような気がする。

私が、そうなのです。
私が周りとあまり上手くやれなくて、付き合いが悪くて友だちも少ない。
近所ともあまりお付き合いしておらず、昨年初めて組の防災訓練に参加したほどです。

自分の身に何かあった時、その時家族がいなかったら、誰に頼ればいいんだろうと時々考えます。

私みたいな人って、特に若い人には多いんじゃないかと思います。
周囲との関係がとても浅く、自分よがりになっている。

清太さんを見ていてイライラしたのはそのせいかもしれない。自分を見ているかのようで、イライラしたのかもしれません。
その彼は結果、自滅した。

こんな風になってはいけないのだというメッセージを、私はこの映画から受け取りました。

トトロの後がコレだった…

公開時、トトロとこれの二本立てだったそうで…

みんな楽しくトトロを見た後にコレを見たのかと思うと、心中お察しするとしか言えない。
すごいよね、振り幅が。何もこの2つをセットにせんでも。

そうそう、サクマドロップスの缶に水を入れてシャカシャカするやつ…
実はそんなに、甘くない。

あれ、映画だとすごい美味しそうに見えるんだよなあ。

火垂るの墓 [Blu-ray]

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